ポール・サラディノというアメリカのお医者さんが書いた「カーニボア・コード 医師が唱える超食事・大革命」という本を読んだ。

 内容はなるほど、革命的に過激だ。

カーニボアは野菜を一切食べない完全肉食主義

 タイトルにもある「カーニボア」とは何か、という話だが、これはベジタリアンの真逆―――植物性食品を一切食べず、動物性食品のみを食べる「完全肉食主義」とでもいうべき健康法である。

 本書は、動物性食品こそ人間にとって必要な栄養素がすべて含まれているスーパーフードだと主張する。

 ただし食べる動物は牧草飼育、放し飼い、ジビエや天然物など、自然かそれに近い環境で育った高品質なものにこだわる。

 また筋肉部分だけでなく、脂肪や内臓、骨髄や尻尾に至るまで余さず食べるし、もちろん魚や卵も食べる。

 本書がもうひとつ主張しているのは、植物の有害性である。

 野菜も穀物も、植物は体に悪い、一切摂取すべきではない! というのだ。現代の一般的な健康法のほとんどの真逆を行っている。

 野菜や穀物が無条件で体にいいわけではないのは確かだ。

 捕食者から逃げるすべを持たない植物たちは、捕食者に対抗するため、自らのうちに様々な有害・有毒な成分を作り出す。

 それらによって外敵を殺し、あるいは弱らせ「オレを食べたってロクなことにならないぞ」と思い知らせるわけである。

 デイブ・アスプリーの「シリコンバレー式 自分を変える最強の食事」、スティーブン・R・ガンドリーの「食のパラドックス」などの書においても、そういった植物の有害性に気を付けるよう説かれている。

 ただしそれらの書籍は、それでも植物性栄養素は必要不可欠なものであるから、有害性を緩和する様々な方法をもちいた上で「たんまり食べるべし」とも書いている。

 有害性を緩和する方法とは、発酵させたり、煮たり蒸したり、圧力加熱調理したりといったことだ。

 また毒も、適量を的確に使用すれば薬にもなることは、科学的にも伝統的にもいわれていることである。

 植物を食べることは百害あって一利なし―――そう断言するカーニボアの思想は、やはり過激といわざるを得ない。

何はともあれ試してみた、カーニボア

 その内容に「え〜?」とは思うものの、とりあえず試すだけ試してみることにした。

 というのも、ここ最近、植物―――もちろんそこらの雑草ではない、お店て売っている、一般的にも「体にいい」とされる野菜だ―――を食べて、胃腸を中心にむしろ具合が悪くなることが多いように感じていたからだ。

 その不具合が良くなれば…という期待を込めて、完全肉食主義、やってみた。

 鶏、豚、牛。それらのレバーだのホルモンだの。サーモンをはじめとした魚や貝、タコやイカ。卵。

 フライパンで「焼く」調理法はあまりよろしくないとあったので、煮物にして食べた。もちろんおいしい。

 動物食品のみを食べて3日目、早くもお腹の具合がとても良くなってきた。膨満やガスが軽減し、とても状態の良い便が出た。

 これは……いいのかもしれない。続けてみることにした。

 が……

 カーニボアを初めて1週間くらいしたころから、ひどい不快感を下腹部に、つまり胃腸に感じるようになり始めた。体もだるく、重い。

 これはいかんと思い、生野菜のサラダを試しに食べてみた。

 不調感はあっさり消えた。

自分的結論・野菜は必要だが慎重に摂取すべき

 というわけで、私のカーニボア実験は1週間で終了した。

 もちろん、私のカーニボア食のやり方も完璧なものではなかったと思う。

 マニアックな内臓肉や骨髄にまでは手を出せなかったからだ。食べていた肉や魚も、グラスフェッドや天然物ではなくそこらのスーパーで売っていたものだ。

 本当に良質なものを、マニアックな部位も含めて食べていれば、あるいは1週間の時点で出た不具合を我慢して続けていれば、また違う体感が得られたのかもしれない。

 とはいえ現時点での結論としては「私には多分、野菜が必要」ということになる。

 それでもカーニボアからポジティブな学びを得なかったわけではない。

 以降、私は野菜の摂取に関してより慎重になるようになった。

 どうにも自分の体に合わないと感じた野菜は、世間でどのように賛美されていようと食べない。

 食べる野菜に関しても、極力手を加える。伝統的に、漬物にされていたり、加熱料理されていたりする野菜は、生で食べるべきではないと心得る。

 実際、これまでサラダで食べていた多くの野菜を加熱して食べるようにしたら、胃腸の不具合も起こらないようになった。

 いまのところ、私が生で食べる野菜は「玉レタス」だけである。これに関しては、むしろ毎日のように生で食べないと不具合が出る。

 それ以外は、キャベツもサニーレタスもグリーンリーフも加熱して食べる。肉や魚と一緒に煮込むと実にうまい。

 思うに、生で食べて「まずい」「ドレッシングがなければ食べられない」と感じる野菜は、生食には向かないのではないか。

 玉レタスは生に塩だけでもおいしく食べられる。なんなら塩すらなくても食べられる。もちろんフルーツ類も同様だ。

 そしてそれら生の植物食品を定期的に食べていないと具合が悪くなるということは、やはり生の野菜・果物からしか得られない、健康に必要な「何か」もあるのだろうと推測される。

 完全肉食生活も、たまに2〜3日するならいいかもしれない。

 あるジャンルの食材を期間限定で断ち、その食材がひそかにもたらしていた慢性的負担から内臓を休息させる、という変則なファスティング(断食)のやり方があるが、その一種、いわば「植物断食」としてたまにやるのは有効かと思う。実際、最初の頃は胃腸の調子が良くなっていたのだ。

 カーニボア食―――あなたの体にどのようなものをもたらすかは分からないが、興味がおありなら試してみてはどうだろう?

【writer : doku】