むかしから、塩が好きだったのです。

 例えば食事に肉を焼いたとしても、他の家族が塩コショウやソースをかけるのに対し、私は塩オンリー。

 シンプルな塩味のみで料理を味わうのを、何よりの好みとしていました。

塩は体に悪いのか!?

 しかしながら、この塩という物質。

 調味料の王にしてミネラルの王ともいえるこの物質は、世間一般において、体に悪いもののようにイメージされています。

 塩というものを、100%毒物かなにかと思っている人は少数としても、多くの人々は、

「体に必須の栄養素ではあるけれど、現代の食生活においては簡単に過剰摂取となってしまうので、控えめにするのが吉……」

 塩に対して、そのような考えをもたれておられるのではないでしょうか。

 けれども一方では、そのような減塩志向に対し、

「もっとたくさん塩を摂るべきではないか」

 そのような意見も存在するのです。

塩をもっと摂るべきという意見

 地球上の多くの生き物は、ある程度の塩を摂取しなくては、生命を維持することはできません。

 人間にとっても、それは同じ。

 摂取物の重要性、というものにあえて順位を付けるとすれば、塩が位置するのはおそらく三大栄養素より上位です。

 1位が空気(酸素等)とするなら、2位が水、塩はそれに続く3位となるのではないでしょうか。

 だからガバガバ無制限にとっていい、とは、もちろんいいません。

 多くの生き物は、自分たちが日常に餌とする食べ物のみから塩、すなわちナトリウムを得ておりますし、海や海辺に生息する生き物であっても、海水を直接飲んだりはしません(内陸の動物で、どうしても不足する塩分を得るために土や岩を舐める生き物はいます)。

 そのうえで―――「もっと塩を食べるべき」派がその意見を主張する理由は様々あります。

体感

 まずは単純に、体感です。

「塩はおいしい! 食べると体が温まり、元気と気力が出る!」

「体に悪いものならマズいと感じるはずだ。おいしくて元気の出るものは体にいいもの。避ける必要はない」

 そう素直に―――あるいは単純に考える人々は、日々、塩を遠慮なく好きなだけ食べています。

 実際、そういう人々には元気で活動的な人が多いようです。

 日本の文豪、志賀直哉も、

「大概のものは塩辛くないとうまくない。関東や東方の塩辛い味付けは積極的に活動する人間の力の源だ」

 というようなことをいって塩辛いものを好んだそうですが、元気に長生きして88歳まで生きました。

塩分有害論に対する疑念

 塩を体に悪いとする理論には怪しいところがあるのではないか、という考え方を持つ人々もいます。

 塩分の過剰摂取が、高血圧を招き多くの病気の原因となるという説は、とあるアメリカの学者の実験がきっかけで生まれました。

 ネズミを用いての動物実験でしたが、その実験において、ネズミの餌に通常の20倍の食塩を加え、それを半年間も食べさせ続けたのです。さらには飲み水にも1%の塩分を加えました。

 人間に換算すると、一日500gもの塩分を与え続けたことになります。その結果―――10匹中4匹のネズミが高血圧症になったそうです。

 この結果をどう考えるべきでしょう?

 繰り返しますが、人間換算して一日500gです。これを半年間。明らかに異常な量であって、この結果として仮にネズミたちが全滅してしまったとしても、それをもって塩を有害と考えるのは無茶というものではないでしょうか。

 しかも実際には、ネズミは全滅するどころか、4割が高血圧を患ったのみで、残りの6割には何の影響もなかったのですから、

「むしろ塩って、極めて安全な栄養素なんじゃない?」

 そんなふうに考える人たちも出てきたわけです。

過度な減塩志向が持つデメリットへの考慮

 健康のためと思い、過度の減塩生活を送っているせいで、逆に不健康になってしまうパターンもあります。

 意識的に塩を避けすぎて、慢性的な塩分不足に陥り、無気力、冷え性など、毎日元気の出ない状態に陥っている人々は案外多くいます。

 また、そういう塩分不足の人々が夏場などに大量発汗し、危険なまでに塩分を失って、昏睡状態に陥ったり、最悪命を落としてしまう場合もあります。

 そのような例を危険視し、塩分の積極的摂取を薦める人々もいます。

塩の種類に関しても意見は様々

 また一方では、体にいいか悪いかは塩の種類によって決まる、という見解もあります。

 我々が食塩として使用しているもののなかでも、塩にはいくつかの種類があります。

  • 精製塩 … 海水を科学的に精製し、ナトリウム以外の不純物のほとんどを取り除いたもの。
  • 天然海塩 … いわゆる粗塩。海水のなかの塩を昔ながらの方法で結晶化させたもの。
  • 岩塩 … 地中から採掘される塩。
  • 焼き塩 … 天然海塩を焼き、サラサラにして味もまろやかにしたもの。

 ただ問題は、これらの内どれが体に良くて、どれが悪いのか、その意見が、専門家たちの間ですらバラバラであることです。

 ちょっとネットで検索してみれば分かります。

 どいつもこいつも、よくもまあ他人と正反対の意見をこうも自信満々に語れるものだ、という気持ちになるほど、塩に対する様々な意見で溢れています。

各塩への否定論と肯定論

 各塩に対する、否定論と肯定論をまとめてみましょう。

天然海塩

・天然海塩への否定論

 にがり(塩化マグネシウムをはじめとしたナトリウム以外のミネラル分)は有毒。にがりの凝固作用は体中の器官を硬くしてしまう。

 伝統的な塩の製造法というのも、いかにして塩からにがりを排除するかを工夫してきた。にがりに害があることを、昔の人は分かっていたのだ。

・天然海塩への肯定論

 天然ものの海塩はミネラルたっぷりで体にいい!

 カリウムなども入っているので、少々の量を摂っても平気。摂りすぎた分は体から排泄される。

岩塩

・岩塩への否定論

 ミネラルたっぷりといわれることも多いが、岩塩にはナトリウム以外のミネラルはほとんど入っていない(もちろんナトリウムはミネラルなので、ミネラルたっぷりというのは嘘ではない)。

・岩塩への肯定論

 ナトリウム以外の余計なミネラルが入ってないからこそ、安心して使える。

 有名な長寿村の人々は塩が大好きで毎日たっぷり食べるが、そこでの塩は岩塩である。ナチュラルかつ純粋なナトリウムこそが無害で有益なのだ。

焼き塩

・焼き塩への否定論

 焼くことで、せっかく塩の中にある海の酵素が死んでしまう。

 また有益なミネラルも壊れたり、変質したりしてしまう。

・焼き塩への肯定論

 サラサラして使いやすくなり、味もまろやかになる。
 
 また生の塩は胃を痛めるが、焼き塩にすることでそれがふせげる。熱することで、有害な成分、有害なミネラルを排除することができる。

精製塩

・精製塩への否定論

 精製塩は体に悪い。ほとんどが塩でミネラルが入ってない。

 サラサラにするために混入された炭酸マグネシウムなどの添加物も良くない。

 人工的な生成の過程で、ナトリウム自体の性質も悪いものに変化している。

・精製塩への肯定論

 余計なミネラルが入ってない純粋なナトリウムに近い分、天然海塩よりマシ。

 サラサラ用の添加物も、人体に害になるようなものではない。

問題はにがりの是非?

 上記の肯定論・否定論において、メインとなる問題点は、

「塩にふくまれるにがり(ナトリウム以外のミネラル分)は体にいいのか悪いのか?」

 そういうことになりそうです。

 マグネシウム、カリウム、カルシウムといったミネラルは人体の健康のため必須です。なら、それらがまとめて摂取できるにがりは体にいいように思えます。

 一方、やはり、海水を直接飲む動物はいない……それも確かなことではあります。

私の塩への私見

 ここからは、私の各塩への私見となります。

精製塩への私見

 サラサラで使いやすい。

 やや味がとがっているようにも感じるが、シンプルな塩味を得られる。

 特別体に悪い刺激があるとは思えない。が、どうせなら岩塩か焼き塩を使うであろう。

岩塩への私見

 精製塩同様、シンプルでわかりやすい塩味を得られる。

 また品によって、若干のまろやかさなどが感じられる塩もある。

 サラサラしているかどうかは商品による。

 ミルで削るタイプもあるが、特に味わい等に違いがあるように思えたことはないので、あまり使わない。

焼き塩への私見

 サラサラで使いやすい。

 あじわいにも、癖がない程度に深みがある。

 精製塩や岩塩にはないおいしさ。

 後述の天然海塩にある「効き」はあまりないが、逆に「不快感」(やはり後述)に陥ることもない。

天然海塩への私見

 上記三種とは違い、にがりがガッツリとはいった天然海塩。

 これをどう評するべきかがなんとも難しい。

 例えば朝、天然海塩を溶かした塩水を飲むと猛烈に元気が出る。

 体がかっと熱くなり、目がばっちりと冴え、腹の奥から気力がわきあがってくる。

 しかし、こりゃあいいやと調子に乗って、昼食にもその塩を使うと、食後にはひどく気怠くなり、のぼせたような気分になる。

 一種の成分酔い? のような感じになってしまう。

 これは、精製塩、岩塩、焼き塩を摂ったときにはならない症状。

 上記三種の塩は、少々多めに摂っても、こんなことにはならない。

 天然海塩は、カリウムのおかげでたくさん摂っても平気という意見があるが、むしろ逆で、たくさん摂ると気分が悪くなる。

 ただこのへんは考え方で、たくさん摂ると気分が悪くなるというのは、摂りすぎを防ぐための自然な体の反応、とも考えられる(普通の飲食物だってそうだろう?)。

 逆にたくさん取っても気持ち悪くならない類いの塩は、それゆえに過剰摂取の危険性をはらんでいるともいえる。

結局塩とどう付き合うべきなのか?

 長々書いてきましたが、

  • 塩を積極的に摂取すべきなのか否か。
  • 摂取するならどんな塩がいいのか。

 に関して、明確な答えは出ません(無責任なことはいえません)。

 ただ、人体にある程度の塩分摂取が必須であることに違いはありませんので、

「寝起きに塩水」

 を飲む習慣くらいなら、身心に無害で、かつすばらしい有益性も得られるのではないでしょうか。

 量は1g前後。

 自分の体に合う、自分がおいしいと感じる塩1gを適量の水に溶かしてのみ、そこから先は普通か、やや減塩気味に食生活を送るのです。

 寝起きは最も体が塩分を必要とする時間帯だといわれています。そのタイミングにきちんと塩を補給することで、塩が与えてくれる元気パワーを十全に受け取るのです。

 その後の塩分は控えめにしておけば、過剰摂取や、上記の不調感等の副作用も防げるでしょう。

【writer : doku】