先日、出先で外食せざるを得ない日があった。

 なにが入っているやら分からぬ、おかしげなものは喰いたくない。しかしあまり金もない、という状況だったので、松屋で牛めしでも食おうということに相なった。

 松屋の牛めし、結構好きなんである。やはり無添加が嬉しい。ほかで化学調味料たっぷりの食事を摂ったりすると、舌がびりびりした後、神経系統が微妙に狂い始め、情緒不安定になることがあるがが、松屋はそれがないだけありがたい。

 また松屋の牛めしには、ハーブのオレガノが結構合う。もともと腸内環境に良いと聞いてはじめたオレガノだが、肉類にかけると極めておいしい。外食するようなときは、小瓶に摘めたものを鞄に入れて持ち歩いている。

ひさびさの牛めしに舌鼓を打ってみたが

 というわけで、松屋に行った。

 牛めしの…特盛りはさすがにアレなので(1318kcal!)、大盛り(959kcal)で済ますことにした。

 サラダなどはあえて注文せず。松屋はカウンターに置かれた調味料等も無添加、ということだが、ドレッシングに関しては使用されている油の質が心配だ。もちろんなにもかけずに喰ってもいいのだが、値段の割りにたいした量もないサラダを、そこまでして食べたい気分でもなかったのでやめておいた。

 さほど混んでもいなかったので、注文後三分と待たず牛めしが届く。蓋を開け、カウンターの紅ショウガを適量放り込み、持参したオレガノを振りかける。軽く混ぜ、一口食す。

 おいしい! しかもあたりだ!

 むかしはしょっちゅう松屋で牛めしを食べていた。そういうひとなら分かると思うが、同じ牛めしでも案外個体差がある。

 肉がやわらかかったり、硬かったり。脂身が多かったり、少なかったり。つゆが濃かったり薄かったり。またよそってくれる店員さん次第で、汁が多かったり少なかったり絶妙だったり。

 きょうの牛めしは肉柔らかめ、脂身やや多め、つゆはやや濃いめで量は絶妙。あたりの部類に入る。

 幸せな気分でカッカと食べてしまい、満足した気分で店を後にした。

腹一杯食べたはずなのに…

 しかし満足感は続かなかった。店を出て、駐車場の自分の車に乗り込み、さあ出発するかと思った瞬間、

 ……足りない。

 そう感じた。

 足りない? 足りないなんてことはないだろう。松屋の牛めし大盛りの栄養素内訳は、

  • カロリー/959kcal
  • たんぱく質/23.4g
  • 脂質/28.9g
  • 炭水化物/140.7g
  • ナトリウム/1678mg
  • 食塩相当量/4.3g

 てな感じで、確かにタンパク質がさほど多くないが、それでも1000kcal近く食べているのである。いわゆる三大栄養素もきちんと全部そろっている。これを喰ってなお腹が減るとなると、どうにもならない。

 しかし不足感は確かに存在する。消える様子がない。いまからまた店に引き返して、牛めしのおかわりを注文したいところだ。

野菜の微量栄養素であろうと空腹感の原因になる。

 まあそのときは、なぜこんなに飢えを感じるのか、その理由が想像できたので、とち狂った行動は取らずにすんだ。

 まずは持ち歩いているビタミン剤を飲んだ。すると多少不足感が収まった。

 出先での用事を手早くすませ、さっさと自宅へ。帰宅すると、ブロッコリーを中心にした冷凍野菜を鍋でゆで、軽く塩を振って食べた。デザートにはブルーベリーもつけた。

 すると、あの異質な空腹感は完全に消えてしまった。

マイナー栄養素の不足が過食を招く。

 つまるところ、私の身体は野菜を欲していたのだ。ちゃんとカロリーを摂っても、ちゃんと三大栄養素を摂っても、野菜が足りないからお腹を空かせていたのだ。

 ビタミン、ミネラル等の微量栄養素が健康のために必須であることはわきまえていた、これらの一時的な不足がここまで空腹感を招くものだとは思わなかった。

 また単なるビタミン剤では不足感を補いきらなかった点にも注目だった。マルチビタミンに含まれているような「メジャー」な微量栄養素だけじゃ、ダメだということだ。おそらく食物繊維も重要な要素だろう。

 世の中の、どうしても過食がとめられないという人々は、実際には栄養不足なのだ…という説を聞いたことがあったが、頷けることである。

 足りないのは微量栄養素でも、脳から送られてくるのはあくまで食欲という形のサイン。目の前に肉だのご飯だのが存在すれば、そいつらを喰らいたくなる。

 しかし、食べても食べても満たされることはない。飯や肉では、必要なものを補充できないのだから。結局お腹がパンパンになるまで食べて、それでもなお不足感を感じている。

外食はますます難しいと感じる

 普段の生活において、野菜の山盛りを食べることは正しかった! と確信する話だったが、同時に「今後出先でなにを食べればいいのだろう…」という悩みも発生した。

 外食で食べる野菜って、実に高い。たっぷり食べたければ、相当なお値段を支払わねばならない。

  • それなりに高い品質の食材を使い、
  • わけのわからん調味料等を使わず、
  • できれば高タンパク、低糖質、良質の脂質を使った中くらいのカロリーで、
  • そして野菜山盛り。

 そんなメニューを外で食べるとなると、どれくらいのお金がかかるだろう。千円、じゃすむまい。二千円? 三千円? 家でなら数百円で用意できるものに、そんなお金をかけてはおられない。

 松屋で喰った後コンビニで袋入りのカット野菜でも買い、塩だけ振ってばりばり食う、という手もあるが、いくらなんでもめんどくさい。また牛丼って、カロリーのわりに低タンパク高炭水化物なのも確かなのである。

 ますます「健康志向の出不精生活」が進みそうだ。

【writer : doku】