エビオスの謎。精力絶倫の効果があるとは思えない……が?
みんな大好きエビオス。
知らないひとのために書いておくと、エビオスとはアサヒフードアンドヘルスケア株式会社(アサヒビールの関連会社)より1930年(!)のむかしから販売されている「胃腸・栄養補給薬」で、その材料のほとんどが、ビールを造る副産物として生まれるビール酵母で構成されている。
ビール酵母は、その成分の約50%がアミノ酸。必須アミノ酸9種を含む十数種類のアミノ酸が含まれている。30%は食物繊維で、そのほかにも様々な微量栄養素が満載されている、とのこと。
そんなエビオスが、昭和初期の時代から日本人に愛されている理由は、単純な話。効くから、だ。
- 胃腸の調子が良くなる!
- お通じが改善!
- 栄養補給で毎日元気に!
また愛用者間でまことしやかにささやかれている効能として、
- 精力絶倫に!
- 鬱が治った!
などというのもある。
しかしながら、エビオスってそんなに栄養、ある?
そんなすばらしいエビオス錠であるから、栄養成分表のひとつでもチェックしてみたくなるが、それを見ると「おや?」と首をかしげてしまいたくなる。
くわしくは以下の2ページを見比べて頂ければわかると思うが、
一日30錠も飲まされるにもかかわらず、
「エビオスって、そんなに栄養、ないのでは……?」
そう思わざるを得ない。
各ビタミンやミネラルの保有量を見ても、一日に必要な摂取量の、せいぜい十分の一程度。一般的なマルチビタミン、マルチミネラルであれば、たった一錠やそこらで、少なくともこの十倍くらいの栄養素を摂取できるだろう。
エビオスで精力絶倫を唱える人たちは「エビオスは亜鉛豊富だから」というけれど、エビオス30錠の亜鉛保有量は0.43mg。男性が一日に必要な亜鉛量は11~12mgであるから、ぶっちゃけ亜鉛など入っていないに等しいのである。
核酸やグルタチオンといった健康に大切な成分も含まれているが、これらは消化器官で分解されるので、経口摂取しても意味はないという説もある。
アミノ酸関係については、一般的なアミノ酸サプリに比べればやや劣るが、スポーツ目的での摂取ではないならば、まぁまぁ……といった程度か。
なんにせよ、世間の人々がいうほど劇的な効果をもたらす成分が、エビオスに含まれているとは思えない。
じゃあなぜエビオスは効くのか?
なぜエビオスは効くのか。
謎である。ここから先は、その謎を考えてみた推測に過ぎないが、
- プレバイオティクス(食物繊維など腸内細菌の餌となるもの)として極めて優秀である。
- 腸が改善されることにより、人体に有益な栄養素を吸収しやすくなり、また少量でも有効に活用できる体質になる。
- ビタミン、ミネラルはごく少量であるが、天然由来の成分であるので、化学合成されたサプリより体に吸収されやすく、また有益である。
- アミノ酸もまた同様に吸収されやすく、優秀な成分バランスとなっている。
- まだ科学で解明されてない、未知の有益成分が含まれている。
- 上記の要素の相乗効果。
そんな感じ……ではなかろうか。
まあ未知の成分はともかく、プレバイオティクスとして優秀であれば、各種の効能についても納得ができる。
腸は「人体で最も大切な器官はなにか…をあえて決めるなら腸」といわれるほど、心身全般に対して絶大な影響力を持つ器官だ。腸が良くなれば、脳も良くなる。他の内臓器官もよくなり、生殖能力も高まるだろう。
結局のところ、エビオスは製造元の謳っているとおり、実にナイスな「整腸剤」であるのだ。
能書きはともかく効くならいいんだよ
長々と書きつらねたが、つまるところはそういう結論になる。
論より証拠。理屈が立とうが立つまいが、いいものはいいし、効くものは効くのである。
もちろん玉石混合の健康食品業界、「実はタチの悪い副作用がある!」とか「得られているのはプラシーボだけ!」というパターンもあるだろうが、歴史も長く多くの人に認められるエビオスについては、その手の心配はほぼないと思う。
きょうも食後のサプリとして、あるいはプロテインのお供として、一回10粒、噛んだり飲んだりしている。
(追記…やはり栄養成分がそれほど多くないことに違いはないので、エビオスがビタミン剤のかわりになるなんてふうには思わない方がいいだろう)